看護職の方へ大阪府看護協会のACP事例2

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事例2 外来 これ以上のがん治療はしたくない
 Cさん(60歳代、男性)、肺がん。妻に先立たれ、長女家族と同居、長男は他県在住。
 肺がんU期で手術し、術後補助化学療法を受けたが、5年後に再発し外来通院で免疫チェックポイント阻害剤による治療を受けていた。治療開始後12か月の定期検査で肝転移が発見され、医師から、転移があることと化学療法への治療変更について説明されたが、Cさんはこれ以上の治療を拒否した。

ACPアプローチ ある時

    • 本人・家族
    • 看護師
    • 気づく
    • Cさん
      「治療を頑張ったのに再発した」
      「抗がん剤はしんどいから受けたくない」
      「今まで通りに仕事を続けることができるだろうか」
    • 「治療をしないと今後どうなっていくか分かっているのかな
      「家族が受診に付き添ったことはない。現状が伝わっているのかな
    • 患者と
      共有
    • Cさん
      「再発予防の抗がん剤がとてもつらかったのに再発した。抗がん剤による治療は2度としたくない。がんになってから7年生きられたので、あとは苦痛は最小限に過ごし、できるだけ仕事を続けたい」
      「今まで自分で決めてきたので、子どもたちは自分の意思を尊重してくれると思う」
    • 患者の現状の受け止め、患者の病状についての家族の理解の確認
      Cさんが拒否する理由は、はっきりしていて自分の病状も理解できている。治療のメリット(延命)よりもデメリット(苦痛)を被らないことを優先したいと考えている。「この意思が尊重できるようにしよう」
      ・「家族は本当にCさんの意思を尊重してくれるのかな。みんなで合意した方がいいな
    • 動機付け
    • Cさん
      「苦痛のないようにしてほしいが、人工呼吸器などの延命処置は一切不要」「仕事を続けたい」「自分の気持ちを家族とも話し合ってみよう」
    • 家族との共有を促す働きかけ
      「今後、ご家族の協力が必要になることもあるので、今の状況と治療中止の意向について話し合ってみてはどうでしょう。次回受診時に一緒に来院してもらって、これからについて話し合いませんか」
    • 場作り
    • Cさん
      「これ以上の積極的治療は受けない」「動ける間は仕事を続け、家で生活したい」「苦痛のないようにしてほしいが、人工呼吸器などの延命処置は一切不要」「最後の療養場所はまだ決められない」

      家族
      「治療を受けないことについては本人の気持ちを尊重する」「延命処置くらいはしてもらったらよいのでは」
    • Cさんと家族、主治医、外来看護師(必要に応じて薬剤師、医療ソーシャルワーカー〈MSW〉、地域連携部門看護師)を交え、外来での緩和ケア、体調管理や緊急時の対応について説明した。

      目標の設定
      ・延命処置の意味について家族に説明し、延命処置は行わない。
      ・積極的治療は行わず、外来で緩和ケアを受けながら仕事を続ける。
      ・今後の療養場所や、苦痛出現時の対応について考えていくように促す(次の意思決定に備える)。
    • 反応・結果
    • 実施
    • 生きるを
      支える
    • 今、出来ることをしたい!
      反応・結果

      治療を受けないで少しでも好きなことをして過ごせる(提供されたプランの選択による意思決定)。
      Cさん
      「定期的な受診で経過をみてくれるので安心」「仕事も少しずつ整理しながら、どこで療養するかも考えていこう」

      家族
      「病状が進んでいったときの介護のことも考えておかないといけないな」
    • 実施
      ・苦痛症状の出現の有無、日常生活の過ごし方を確認する。
      ・身辺整理(仕事の委譲や財産等)についても、少しずつ考えるように説明する。
      ・今後の療養の場についての希望を病状や症状変化に応じて確認、いつでも相談にのれることを伝える。
      ・病院、緩和ケア病棟、在宅医療の特徴と利用の仕方を説明する。
考え方のポイント
 患者の意向が明確であっても、意思決定能力の低下に備えて、そして、患者の意向が尊重されるためには家族も含めた合意形成が必要です。家族も巻き込んで話し合いましょう。一度、意思決定しても患者の気持ちはゆらぐこともあります。また、療養の場や終末期の苦痛緩和の手段の選択など、今後もさまざまな場面で意思決定が必要となります。そのため、一度きりではなく繰り返し話し合い、継続して支援することがACPの実践として大切です。

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