看護職の方へ大阪府看護協会のACP事例1
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事例1 入院:慢性期 少しでも食べさせてあげたいんです
Bさん(80歳代、男性)、誤嚥性肺炎。妻(80歳代)と2人暮らし。
誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しており、今回も入院となった。医師から、嚥下機能の低下により誤嚥性肺炎を繰り返していること、今後、経口摂取は困難で経管栄養か点滴になることを、本人と妻へ説明された。Bさんは閉眼していることが多く、声掛けにうなずきや追視はあるが、発語はない。妻は、医師からの説明後も、繰り返し経口摂取を希望している。
誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しており、今回も入院となった。医師から、嚥下機能の低下により誤嚥性肺炎を繰り返していること、今後、経口摂取は困難で経管栄養か点滴になることを、本人と妻へ説明された。Bさんは閉眼していることが多く、声掛けにうなずきや追視はあるが、発語はない。妻は、医師からの説明後も、繰り返し経口摂取を希望している。
ACPアプローチ ある時
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- 本人・家族
- 看護師
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- 気づく
- Bさん
呼びかけに対する反応はよくなってきているが、意思表示は難しい。
妻
経口摂取を繰り返し希望している。 - 最近は痰の量も減少し、呼吸状態も落ち着いている。反応もよい。
「少しだけなら食べられそう。妻も希望しているし、経口摂取するなら今しかないのでは」
-
- 患者と
共有 - 妻
「極少量でいいからアイスを食べさせてあげたい」 - 妻の気持ちを汲み取りながら、どのようなケアを提供することが本人にとっての最善と考えているのか、妻の思いを確認する。
- 患者と
-
- 動機付け
- 妻
「お楽しみ程度に、味がするものを口に入れてあげたい。夫が喜ぶと思う」「でも先生は厳しいと話しているし、肺炎のリスクは不安」
妻
「お父さんは食べることへの欲求はそれほど強くなかった。それより家族が一緒にいることをとても大切にしていた」 - 本人・家族の希望に配慮した関わり
「どうして食べさせてあげたいと思うのですか」
「Bさんは健康なとき、食べることが好きな人だったんですか」
・経管栄養や点滴について、どう考えているかを共有する。
・妻以外の家族や本人の希望を確認してみる。
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- 場作り
- 妻 「アイス食べたい?」と聞きながら、スプーンで口元に近づける。
Bさん 問いかけにうなずき、口を開けて1口だけ食べ、目を閉じながら口を動かしている。
妻 「冷たくて美味しいでしょう? お父さん良かったね」
妻
毎日の面会、ナースがホットタオルを渡すと、顔や手を拭きながら夫に話しかけている。
「食べること以外でも、お父さんにしてあげられることがあるんだ」 - チームで繰り返し検討
・主治医に妻の思いを伝えて、アイスクリーム等少量の流動物の経口摂取の許可を含めて、治療方針の決定と嚥下リハビリの指示を依頼した。
・看護師は、カンファレンスなどで、本人にとって苦痛のないケアは何か、妻と共に考える。
・リハビリスタッフ・栄養士に、本人へ提供できる支援について相談した。
目標の設定
・経管栄養はしないで、点滴治療を中心に行う。
・夫への妻の役割が見いだせるよう、世話をしながら最期まで見守る。
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- 反応・結果
- 実施
-
- 生きるを
支える - 嬉しい!喜んでくれた!
反応・結果
妻「食べることだけじゃなく、顔を拭いてあげたり、側で話したりするだけでも、喜んでくれました」
Bさん
妻のケアに笑みを見せ、反応された。
妻
死亡退院後、ケアできた喜びを明るい表情で伝えに来院された。 - 実施
・妻が夫のためにできる安全なケアの方法はないかを一緒に考え、アイスクリームの摂取やアイスマッサージを提案。家族希望時に、看護師が見守るなか実施した。
・面会時は妻と共にBさんの反応を共有する。
・清拭など家族でも行えるケアができるときには、声掛けを行う。
- 生きるを
考え方のポイント
看護師は、妻の「夫に食べさせてあげたい」という思いを大切にしたいと感じ、夫への思いを知るためのコミュニケーションをとった。妻にとっては、夫への唯一残された妻の役割が「何かを食べさせること」という方法のみであった。看護師は代理意思決定者の妻に、夫が健康なときに、生活の中で何を大切にされていたかを確認し、妻が夫の思いに気付けるように介入した。アイスクリームを食べさせることも夫婦のコミュニケーションとして大切にしながら、妻を含めたチームで繰り返し検討することで、嚥下困難のある患者の身体に負担をかけず、妻の役割を見いだすことができた。