看護職の方へ大阪府看護協会の事例3

トップページ > 看護職の方へ > 大阪府看護協会の事例 > 大阪府看護協会の事例3

事例3 退院調整 今まで十分頑張った、治療をやめようと思う
 Eさん(80歳代、男性)、大腸がん、多発肝転移。昨年、妻を亡くし一人暮らし。子どもはいない。キーパーソンは姪。
 抗がん剤の副作用による好中球減少症で入院となり、医師は抗がん剤の変更を検討している。病気は進行し、度重なる副作用症状が出現している。

ACPアプローチ ある時

    • 本人・家族
    • 看護師
    • 気づく
    • Eさん
      「もうこれ以上、抗がん剤でしんどい思いはしたくない」
    • 表情・動作・雰囲気を観察
      「もうこれ以上」という言葉を初めて出された。治療に関しての思いを確認する。
      「抗がん剤しんどいですね」
      ・言葉を反復して反応を確かめる。
    • 患者と
      共有
    • Eさん
      「抗がん剤をやめようと思う。でも先生に勧められたからなぁ」
      「先生には長いこと世話になっとるからなぁ」
    • 患者の思いを確認(ゆらぎ)
      「抗がん剤はやめたいのですね。でも先生には本心が伝えられないのですね」
       ・伝えられない理由を確認する。
    • 動機付け
    • Eさん
      「今まで十分頑張った。もう治療はしない。動けるうちに妻の遺品とか、いろんな整理をしたい」

      「患者である叔父自身の意思にすべて任せたい」
    • 意思決定への関わり、支援者の思いの確認
      「残された時間をどのように過ごしたいですか」
      ・本人が何を望んでいるのかを明確化する。
    • 場作り
    • Eさん
      「先生に気持ちを伝えられて、分かってもらえてほっとした。往診もお願いするけど、今までの先生にも診てもらいたい」「これからは楽に生きたい。でも一人暮らしなので不安。寂しい」


      「一人暮らしやから、家のことが気になってるんやね。今までご飯を作って届けていたので、これからも続けてあげたい」

      目標の設定
      Eさん
      ・動けるうちに妻の遺品の整理をしたい。
      ・痛みやしんどさを取りながら、できるだけ長く家にいたい。
    • 主治医との面談を設定(治療方針の変更)
      本人の意向を確認する場を設定し、治療について共に検討していく。現在の病状、今後予測される体調について説明し、療養生活(家庭生活)上の留意点を明確化する。

      退院支援カンファレンスの計画
      各関係者に連絡調整する。本人が望む生活、何をしたいか、残された時間をどのように過ごしたいのかを共有し、療養上の留意点について話し合い、具体的な方法について調整する。
    • 反応・結果
    • 実施
    • 生きるを
      支える
    • 家でも話し合おうね
      反応・結果

      Eさん
      「できる限り家にいたい。できれば最期は家で迎えたい。意識がなくなったら姪に選択を委ねる」。

      「家でもいろいろ話し合います」
      ・代理意思決定者の承諾。
    • 実施
      ・退院前訪問、退院後の自宅の準備開始。本人・姪に急変もありうることを伝える。
      ・在宅療養が困難な場合に、入院できるベッド(バックベッド)の確保をする。
      ・代理意思決定者を確認する。
      ・状態悪化時、どこでどのような対応を望んでいるのかを確認する。病院か自宅かの選択は、1回の決定がすべてではなく、変化しても自然なことであることを伝える。
考え方のポイント
 患者の奥深くにしまい込まれた思いが、こぼれ出ることがあります。そんなとき、表出された言葉をつかみとり、一緒に考える場を作り、建設的に患者の望む形へと調整することが、その人らしさを支える退院支援となります。
 ACPアプロ―チがない時、看護職は症状緩和や副作用の確認といった、目の前に起こる現象への対応に終始しがちです。その人らしく過ごすのか、その人らしさを諦めるのか、患者が自分の人生を「生きる」ために、看護職は患者の思いに気づき、行動することが大切です。

看護協会についてCONTENTS