看護職の方へ大阪府看護協会の事例4

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事例4 地域・在宅他人を家に入れたくないから家族だけで大丈夫
 Gさん(80歳代、女性)、アルツハイマー型認知症。夫(80歳代後半)と2人暮らし。長女・長男・次男はそれぞれ世帯を持ち別居している。要介護2、短期記憶の低下がみられる。
 食事や飲み物でむせることが増え、誤嚥性肺炎を何度も繰り返している。失禁し尿路感染を繰り返す。主な介護者は夫で、家事・介護を一人で行っている。寝具は布団。

ACPアプローチ ある時

    • 本人・家族
    • 看護師
    • 気づく
    •  「妻は最近寝てばっかり。食欲はあるけど起きないから寝たまま食べさせることもある。よくむせる」
      長女 「最近失禁が増えた。病気が進んでいるのかと心配」
      長男 「週1回くらいは嫁と一緒に様子を見にいってるけど、お袋は嫁への当たりが強いからあまり手出しできない」
      次男 他県在住で、帰阪するのは盆と正月のみ。
    • 本人・家族の表情・言動等の変化に気づく
      ・Gさんの言動がいつもと違う。落ち着きがない。「体調が悪いのかな」「何か心配事があるのかな」
      ・夫も疲れた表情を見せている。「介護疲れが溜まってきているのかな」
      ・Gさんは認知症の進行に伴い誤嚥性肺炎や尿路感染を繰り返しており、夫の介護疲弊がある。夫婦間の緊張関係から本人のBPSD(周辺症状)が発生している。
      ・「認知症の奥さんを一人で抱える限界に近付いているんじゃないかな」
    • 患者と
      共有
    •  「認知症なんて近所に知れたら妻がかわいそう。何とか自分で面倒みようと思ってた。でもうまいこといかん。どうしてやったらいいのか分からんのや」
    • 患者・家族の思いを確認、傾聴
      介護や生活のなかで困っていることや不安なことがないか確認する。
    • 動機付け
    •  「今まで何とか家族でやろうとしてきたけど、肺炎や膀胱炎を繰り返すようになって、このまま家でみてていいのか心配」
      長女 「お母さんには1日でも長く生きてほしい。でもお父さんが心配。自分も仕事と家庭があるので様子を見に行けるのは月1回くらい」
      長男 「どうしていいのか分からない」
      次男 「自分は何もできない」
    • 患者の思いの代弁や家族の思いを受容し、情報提供
      ・終わりの見えない介護の苦しさを抱えながら日々奮闘している家族を労う。
      ・患者は今もご主人のことを思っていることを伝え、認知症の患者を身内だけで介護することの難しさについて説明する。
      ・病気の進行に伴いできないことが増えてくる。食べられなくなったら、寝たきりになったら、ご主人が病気をしたらどうしていくのか、患者や家族に考えてもらう。
    • 場作り
    •  「病気になる前、『胃に穴をあけて栄養とるなんて嫌!治らないなら延命処置は要らない』と言っていた」

       「たくさんの人の手助けがあることが分かった。相談できる場所も分かった。ほっとした」
    • 連携し、チームで支えるためのコーディネート
      Gさん、家族(夫・長女・長男)、かかりつけ医、歯科医師、訪問看護師、担当ケアマネジャー、薬剤師、訪問介護士、地域包括支援センター職員、オレンジチーム職員、民生委員、見守り隊(ボランティア)へ呼びかける。

      目標の設定
      病状や家でできる対応について、使える資源について、それぞれの職種から説明をして考えてもらった。
    • 反応・結果
    • 実施
    • 生きるを
      支える
    • お父さんに笑顔が戻った!
      反応・結果


      「精神的に楽になった。できるだけ長く家でみてやりたい。自分が先に死んだり、病気で動けなくなったら施設に入れようと思う」
      家族
      「お父さんがニコニコしてる」
    • 実施
      ・介護ベッドを利用し起坐で食事すること、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケア・トロミ剤の使用を提案。肺炎や尿路感染発症時、集中的に医療提供を行う。
      ・夫の息抜きができる環境整備の提案。
      ・健康管理・内服管理のために訪問薬剤師と介護保険で週1回訪問看護を利用(24時間対応体制加算あり)。介護用ベッドレンタル・訪問介護・認知症対応型通所介護を利用。
考え方のポイント
 自宅で家族が患者を介護している場合、「抱え込み」していることがしばしばあります。誰にも相談できず、資源の利用方法も分からず奮闘している家族のSOSをいち早くキャッチすることが大切です。「家に他人を入れたくない」という思いにばかり気を取られると、ニードを見失うこともあります。患者の言動や家族の言動に注意を払い、「気づき」につなげましょう。

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